タロットデッキ/オラクルデッキ

タロットの起源とタロット占いの歴史まとめ2:マンテーニャ、エステンシ・タロット

前回の記事では、15世紀のイタリアで作製されたヴィスコンティ家のタロットまでを取り上げました。

当時のタロットは遊戯目的で使用されていたようです。

タロットの起源とタロット占いの歴史まとめ1:ヴィスコンティ版

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もちろん、記録に残されていないだけで、占いに用いられていた可能性もありますが・・・タロット占いが歴史上に現れるのは、数百年後の18世紀になります。

では今回も、引き続きイタリア製のタロットを見ていきましょう。

 

学習道具だった?!マンテーニャ・タロット

出典:The World Playing Cards

 

1460年頃に作製された木版画による50枚の絵札がイタリアにあるエレミターニ博物館に収蔵されています。 Eシリーズ、とSシリーズと呼ばれる2種類のセットです。

ミケランジェロの弟子ジョルジョ・ヴァザーリが、自著『画家・彫刻家・建築家列伝』の中で、「アンドレア・マンテーニャが作成したトリオンフィ(タロット)」について触れたため、このカードは「マンテーニャ・タロット」と呼ばれていました。

しかし、19世紀以降、このカードは2人の未知の画家によって製作されたと考えられています。

また、このカードのセットにはスートがなく、描かれた内容も標準的なタロットとほとんど共通点がありません。

マンテーニャの絵柄は、以下の5つのカテゴリーに分かれています。

  • 人間の状態
  • アポロと9人のミューズ
  • 学問
  • 美徳
  • 天球

学問や美徳、天体などは、擬人化されて描かれています。

 

ちなみに、冒頭に挙げた画像のタイトルは、左上から、「王」、「教皇」、「職人」、「狩人」、「物乞い」、「哲学」、「慈善」、「メルポメネー(悲劇を司る女神)」です。

 

現在、マンテーニャ・タロットは、遊戯用でも占い用でもなく、貴族が教養を身に付けるために使った学習道具の一種であったとする説が濃厚です。

 

マンテーニャ・タロットの内容

マンテーニャ・タロットには、それぞれ絵柄の下に名称と続き番号が記されています。

 

人間の状態

I Misero(物乞い)

II Fameio(召使い)

III Artixan(職人)

IIII Merchadante(商人)

V Zintilomo(狩人)

VI Chavaher(騎士)

VII Doxe(ヴェネツィアの総督)

VIII Re(王)

VIIII Imperator(皇帝)

X Papa(教皇)

アポロと9人のミューズ(美神)

XI Caliope(叙事詩を司る女神カリオペ)

XII Urania(占星術・天文を司る女神ウラニア)

XIII Terpsicore(合唱・舞踏を司る女神テプシコーラ)

XIIII Erato(独唱歌を司る女神エラト)

XV Polimnia(賛歌を司る女神ポリムニア)

XVI Talia(喜劇を司る女神タレイア)

XVIII Euterpe(抒情詩を司る女神エウテルペ)

XVIIII Clio(歴史を司る女神クレイオ)

XVII Melpomene(悲劇を司る女神メルポメネ

XX Apollo(アポロ神)

学問

XXI Grammatica(文法)

XXII Logica(論理学)

XXIII Rhetorica(修辞学)

XXIIII Geometria(地理学)

XXV Aritmetricha(算術)

XXVI Musicha(音楽)

XXVII Poesia(詩)

XXVIII Philosofia(哲学)

XXVIIII Astrologia(天文学)

XXX Theologia(神学)

美徳

XXXI Iliaco(知性)

XXXII Chronico(良識)

XXXIII Cosmico(普遍性)

XXXIIII Temperancia(節制)

XXXV Pnidencia(慎重)

XXXVI Forteza(力)

XXXVII lusticia(正義)

XXXVIII Charita(慈善)

XXXIX Speranza(希望)

XXXX Fede(誠実)

天球

XXXXI Luna(月)

XXXXII Mercurio(水星)

XXXXIII Venus(金星)

XXXXIIII Sol(太陽)

XXXXV Marte(火星)

XXXXVI lupiter(木星)

XXXXVII Saturno(土星)

XXXXVIII Octava Spera(恒星天)

XXXXVIIII Primum Mobile(原動天)

XXXXX Prima Causa(至高天)

 

マンテーニャ・タロットの復刻版

マンテーニャ・タロットには復刻版が存在します。

マンテーニャ・タロット(彩色版)

マンテーニャの彩色版。50枚組のカードに25枚の解説カードが追加されている。

 

マンテーニャ・タロット(B&W)

マンテーニャのモノクロ版。50枚のセット。

 

エステンシ・タロット(エステ家のタロット)

出典:フランス国立図書館のHP

 

エステンシ・タロット(Estensi Tarot)は、テンペラ画で描かれた札で、17枚がフランス国立図書館に収蔵されています。とはいえ、これはイタリアで作製されたタロットであることがわかっています。

フランス王シャルル6世のタロットと間違えられていた

この17枚のカードは、以前は「フランス王シャルル6世のタロット」、あるいは依頼を受けた画家の名前を取って「グランゴヌール・パック」と呼ばれていました。

 

1396年、シャルル6世の会計簿に「金やさまざまな色彩で描かれた56枚の遊戯札」が3パック注文された記録が存在すると前回の記事で書きました。

そして、フランス国立図書館に収蔵されていた17枚のカードが、まさにその遊戯札であり、現存する最古のタロットである、と長らく考えられていたのです。

 

のちの研究により、17枚のカードは14世紀のフランスではなく、15世紀のイタリア北部の町フェッラーラで作製されたという説が有力となっています。

カードの作製を依頼したのは、フェッラーラ公爵ボルゾ・エステ。当時のエステ家の会計帳に画家に対する支払いの記録が残されていました。

 

というわけで、このカードは現在「エステンシ・タロット(エステ家のタロット)」と呼ばれています。実際の作製期間は1469年~1471年と考えられています。

 

注:フランス国立図書館のHPには、いまだにLe tarot dit de Charles VI(シャルル6世のタロットというタイトルがつけられています。

 

エステンシ・タロットの内容

エステンシ・タロットは17枚が現存しています。

16枚が大アルカナ、1枚が小アルカナ(宮廷カード)です。

※カードには通し番号や名称はついていません。

  • 愚者
  • 皇帝
  • 教皇
  • 恋人
  • 戦車
  • 正義
  • 隠者
  • 吊られた男
  • 節制
  • 神の家(
  • 太陽
  • 審判
  • 世界
  • 剣のペイジ

 

 

エステンシ・タロットの復刻版

 

ゴールデン・タロット・オブ・ルネッサンス

オリジナルの残存は17枚だが、エステ家の所有するパラッツォ・シファノイア宮殿のフレスコ画を参考にして78枚のフルデッキに再現されたもの。カードの左側に通し番号と名称が追加されている。

 

参考文献

 

-タロットデッキ/オラクルデッキ

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